Braket多項式$< K >$と$(-A^3)^{-w(K)}$の積の多項式
$L_K(A)=(-A^3)^{-w(K)}< K >(A)$
を, 有向絡み目$K$の正規化Braket多項式 とよぶ. この多項式$L_K$が全同位に関する不変量になることを以下に示す.
$w(K)$もBracket多項式もともに正則同位に関して不変なので $L_K$も正則同位に関して不変である.
ReidemeisterIにおいて正規化Bracket多項式の定義により
$L_
図形(A)
=
(-A^3)^{-w(
図形)}
$<
図形
>(A)$
$ = (-A^3)^{-(1tw(
図形
))}(-A^3)
$<
図形
>(A)$
$ = (-A^3)^{-w(
図形
)}
$<
図形
>(A)$
$ = L_
図形(A)$
よって$L_K$ は全同位に関して不変である.
絡み目$K$のすべての交差点で 上交差線と下交差線を入れかえる絡み目を $K$の 鏡像 とよび, $K^{*}$と書く.
絡み目$K$と$K^{*}$が同型ならば achiral(アキラル) とよび, 変形できなかった時 chiral(カイラル) とよぶ.
絡み目$K$の$A$領域と$B$領域を交換したものが
$K^{*}$なので
Bracket多項式に対して,
$< K >(A) = < K^{*} > (A^{-1})$
が成り立つ.
また,
上交差線と下交差線を入れかえる操作で
交差点の符号はかわらないので
$K$と$K^{*}$の捻り数は同じであり,
従って
$ L_{K^{*}}(A) = L_{K}(A^{-1})$
となることが判る.
よって$L_{K}(A) \ne L_{K}(A^{-1})$ならば $K$は$K^{*}$とは同型でない. 従って正規化Bracket多項式はchiralか どうかの判定に使えることが判る.
例えば4.3の図$P$の正規化Bracket多項式は以下のとおり計算できる. $w(P)=3$, $P$の向きを考えない絡み目は 5.1の$Z$となるので,5.2の計算結果である$Z$のBracket多項式より
$<P>(A)=-A^{5}-A^{-3}+A^{-7}$
L_P(A)&=&(-A^3)^{-w(P)}<P>(A)
&=&(-A^3)^{-3}(-A^{5}-A^{-3}+A^{-7})\\
&=&A^{-4}+A^{-12}-A^{-16}\\